University of Toronto G8 Information Centre

首脳会議・閣僚会議

デンヴァー サミット

-グローバルな経済及び金融上の課題に直面して-
デンヴァー・サミット7ヵ国声明
(仮 訳)


1997年6月21日
外 務 省

はじめに
 1.
我々主要先進7ヵ国の元首及び首相並びに欧州連合の代表は、デンヴァーで会合し、21世紀を目前に控えた今、経済、金融及びその他の分野において我々が直面している課題について討議した。

 2.
我々は、持続的なインフレなき成長と、世界の繁栄に対する貢献に引き続きコミットする。市場のグローバル化の進展は世界の経済成長の重要な推進力であり、これは、すべての国に機会を提供するものである。我々の目標は、グローバル化によって生じる課題に取り組むと同時に、すべての人々にグローバル化による最大限の恩恵をもたらすことである。

 3.
この目標を達成するために、我々は、
  ●
持続可能なインフレなき成長の促進、雇用の創出、健全財政の回復及び人口の高齢化問題への対応を図るための政策を実施し、
  ●
経済成長と繁栄にとって極めて重要な基盤である、貿易及び投資に対する開かれた市場の促進並びにグローバルな金融の安定の支持のために、他の国々と協力し、
  ●
世界のあらゆる地域の移行国及び開発途上国が世界経済に成功裡に統合されることを促進しなければならない。

成長の促進
 4.
リヨンでの会合以来、我々は、我々の経済の多くの指標が良好であることに勇気づけられてきた。インフレは依然として低い水準にあり、経済成長は、堅調かつ持続可能なペースで続いているか、上向いている。また、財政上の措置は、財政赤字を減少させつつある。我々は、新興経済の目覚ましい発展を歓迎する。これは、世界経済の成長に大きく寄与してきた。我々はまた、安定したマクロ経済条件の整備と構造改革の実施とに向けた移行経済の前進を歓迎する。我々は、これらの国々に対し、国際通貨・貿易システムの効率的な機能を確保するために我々と協力するよう呼びかける。

 5.
しかし、我々は、自国の経済において依然としてなすべきことがある。長期的に健全な財政状態を回復するために、また、いくつかの国々では、金融システムの健全性を確保するために、一層の努力を払わなければならない。我々は、いくつかの国々で失業率が高水準にあることを懸念する。高い失業率は、経済成長、財政及び社会の一体性に深刻な影響を及ぼすものである。いくつかの国々では、力強い経済成長と雇用の拡大が見られたが、雇用の伸びの回復が満足すべき水準にない国もある。特に後者の国々では、構造改革を通じて労働市場と財市場の効率性を高めるために一層の努力が必要である。我々は、すべての人々、特に若年者が経済成長に参加し、その恩恵を享受できるようにするとの課題に直面している。この観点から、我々は、OECD(経済協力開発機構)の規制制度改革に関する作業を奨励する。

 6.
高齢化する社会における人口構成の変化が経済、金融及び社会に与える影響に対応することは、我々が直面する最も重要な課題の一つである。このような変化は、年金及び医療にかかる費用に重大な影響を及ぼし、財政に影響を与え、公的及び民間貯蓄を減少させ、資本の世界的な流れに影響を与え得る。したがって、我々は、これらの問題に対処するための構造改革に取り組むことを誓約する。我々は、財務及び経済担当大臣に対して、他の関係当局と調整しつつ、OECD及びその他の関連国際機関において検討することを含め、高齢化の経済的及び財政的影響について検討するよう要請した。

 7.
我々各国の状況と優先事項は異なっている。
  ●
米国では、長期的な景気回復が見られ、雇用創出面での成果があがっている中、引き続きインフレの再燃を警戒し、連邦予算を均衡させるとの合意を完全に実行し、貯蓄を促進することが重要である。カナダは、インフレを極めて低い水準に抑制するとともに、財政赤字の削減に目覚ましい成功を収め、最近成長の加速が見られた。この成長の加速は、一層の雇用創出につながるであろう。
  ●
日本には、内需主導型の力強い成長を達成するとともに、対外黒字の大幅な増加を回避するとの目標がある。より広範な規制緩和のイニシアティブと適切な財政構造改革を含む一層の構造改革は、中期的に見て、日本経済を更に活性化する上で重要である。
  ●
フランス、ドイツ及びイタリアは、力強い雇用の拡大を回復するという困難な課題を共有している。健全な長期的財政状態の回復に向けて努力しながら、これらの国々は、税制及び社会保障制度の改革を含め、雇用創出に対する障壁を低減し、政府の活動の効率性を高め、必要な場合には、経済活動における政府の役割を再編成するための構造改革を更に進める必要がある。英国は、特に教育及び福祉改革を通じ自国経済の長期的成長の潜在能力を強化する一方で、引き続き、インフレ圧力を抑制し財政赤字を削減する必要がある。

 8.
我々は、EMU(経済通貨統合)についてその国際的な影響を含め議論した。我々は、健全なマクロ経済政策及び構造政策により支えられ、国際通貨制度の安定に寄与するような、ユーロの成功裡の導入及び十分に機能するEMUの実現に向けたEU諸国の努力を歓迎する。

 9.
我々は、国際通貨の安定を促進することについてのコミットメントを再確認する。我々は、蔵相に対して、引き続き経済政策及び為替市場について緊密に協力するよう要請した。

10.
我々の政府は、持続可能な成長を促進するため今年新たな段階に入ったロシアの経済改革を歓迎する。ロシアの財政状態に健全な基盤を与えるには、同国の抜本的な税制改革のための計画が不可欠である。我々は、投資環境を改善し、競争を促進し、犯罪及び腐敗と闘い、社会部門を強化するためにロシアが構造改革を強力に推進しようとしていることに全面的に賛成する。これに関連して、ロシアがIMFとの間で設定したEFF(拡大信用供与ファシリティー)プログラムを完全に実施することが極めて重要である。この成功裡の実施は、ロシアが民間投資をより多く引きつける手助けとなる。更に、融資及び保証の双方の増加を通じてロシアの世界銀行及びEBRD(欧州復興開発銀行)との関係が深化し拡大することは、この意欲的な構造改革を支持することとなる。

グローバルな金融システムの安定の強化
11.
国際金融市場は、ますますグローバル化し複雑化しつつある。この状況は、国際金融システムの機能の効率性向上につながり得る新たな機会を提供するものであり、このことにより成長と繁栄が促進される。同時に、これらの変化は新たな課題をもたらす。ハリファックス・サミット以来、リヨン・サミットを通じて、我々は、金融規制当局及び国際金融機関に対し、技術革新を抑圧することなく、また、グローバル化、自由化及び競争の恩恵を損なうことなく、発生し得るシステミック・リスク及び波及リスクに効果的に対応し、金融の安定を促進するための措置をとるよう奨励してきた。我々は、国際金融システムの強化のための協調的な努力を歓迎し、リヨンで特定した主要分野における進展の概要を示した蔵相報告を支持する。

12.
各国の監督当局及び国際規制機関は、通常時及び緊急時の双方において国際的に活動する金融機関の監督を強化するための、協力に関する取決めのネットワークを整備し、提案を作成した。このような努力は、規制の枠組みに市場の進展を一層反映させる上で役立つであろう。更に蔵相は、監督上の目的のための情報交換を促進及び改善する法令上の必要な変更を支持することで一致した。我々の消費者、投資家及び規制当局がリスクを一層明らかにし、管理し及び抑制することを手助けするために、リスク評価の強化、外為決済リスクの軽減及び市場の透明性の改善に向けた措置がとられている。更に、電子マネーに関するG10作業部会が、出現しつつある電子的支払技術に関し各国のアプローチを導く手助けとするため、一連の広範な目標及び主要な考慮事項を明らかにした。

13.
新興市場経済における金融の安定に関する作業部会は、新興経済の金融システムの強化を支援するための具体的な戦略の概要を示した。この作業部会には、新興市場経済からの代表も参加した。また、バーゼル銀行監督委員会は、改善された健全性基準の世界的な採用に大きく貢献する一連の「コア・プリンシプル」を策定した。我々は、これらの報告内容の普及及び支持並びにこれらの報告に示された勧告の実施を要請する。

14.
金融の安定を促進し、発生し得る金融危機を緩和するためのこのような努力は、我々が極めて重視している進行中の重要なプロセスの一部である。我々は、国内の監督当局に対して、規制面での国際協力を強化するために更に提案を作成し、それらを実行するよう求める。我々は、国際金融機関及び国際規制機関に対して、新興市場経済がその金融システムと健全性基準を強化することを支援する役割を果たすよう呼びかける。蔵相は、一層の措置をとるためのアプローチを策定すべく、関連する監督機関、国際規制機関及び国際組織と協議し、来年のサミットに先立ってこれらのイニシアティブの実施に係る進捗状況を報告する。

統合された世界経済の構築
変化する世界における国際金融機関
15.
世界の貿易及び民間資本の流れの急速な拡大に応じ、IFIs(国際金融機関)は適応と改革を継続的に行う必要がある。したがって、我々は、ハリファックス・サミット以降進んでいる意欲的なIFIs改革の計画に対する支持及び、これらの改革の包括的な実施によって国際通貨制度の有効性が大幅に強化されることに対する確信を再確認する。我々は、これらの機関がその努力を続ける中で、これらの機関と共同で作業すること、並びに成功に必要な財源と多数国間による支持を提供するために、我々の間で及び国際通貨制度に利害を有する他の国々との間で協力することを誓約する。

16.
我々は、IMF(国際通貨基金)による国際通貨制度の監視を評価する。我々は、各国が貿易及び投資の自由化を通じて長期的な潜在力を築こうとしていることへのIMFの支援は特に重要と考える。我々は、世界の資本市場における新たな課題に対応するためにIMFに資本取引の自由化を促進する特定の権限を付与するIMF協定の改正の主要な内容について、香港での世界銀行・IMF年次総会までに実質的合意に達することを目指す。我々は、監視の強化及び透明性の改善の促進についてのIMFにおける進展を歓迎する。重大なマクロ経済上の影響をもたらす可能性のある金融部門の問題並びに良い統治及び透明性の促進に対して注意が払われることは、金融危機の回避に役立つ。IMFが行う加盟国との活動における適切な透明性も同様に重要である。我々は、これらの分野でのIMFにおける進展を歓迎する。我々は、特別引き出し権の「衡平な」配分を規定するために、IMF協定の改正案に対する実質的合意に達することを目指すとともに、IMFに対して、9月の香港での世界銀行・IMF総会までに、最終合意に至るよう努めることを要請する。

17.
世界銀行の「ストラテジック・コンパクト」は、貧困の削減に対する世界銀行のより強力な対応、民間部門との強力な新たなパートナーシップ並びに健全な政策及び全市民の福祉に真にコミットする国々に対する業務の集中を強調するものであり、新たな方向への歓迎すべきコミットメントを示すものである。我々は、特に最貧国における制度面での能力構築により重点を置くことへの世界銀行のコミットメント並びにこの取組みにおいて透明性、責任及び良い統治が極めて重要であるとの世界銀行の認識を全面的に支持する。我々は、これらのコミットメントの完全なかつ時宜を得た実行を期待する。我々は、地域開発銀行が、これらの課題への対応に全面的に参加するよう要請する。我々は、香港総会において、開発途上国における民間部門のインフラ投資を支援するための革新的な方策を示すとの世界銀行グループのイニシアティブを歓迎する。

18.
持続的な経済開発と健全な民主主義を実現するためには、透明で責任がありかつ対応力のある公的機関が不可欠である。この関連で我々は、良い統治を促進するための世界銀行の長年にわたる努力及びアジア開発銀行による良い統治に関する方針の採用を歓迎する。我々は、IMF及び世界銀行に対して、統治に関する最良の実践についての原則及び指針からなる統治の問題に関する方針の策定を完了するよう要請する。

19.
IFIsが意欲的かつ重要な改革を成功させるために必要とする多数国間による支持及び財政的資源が確保されるようにすることは、我々の責務である。これは、国際開発金融機関にとっては、特に、例えばIDA(国際開発協会)のような極めて重要な譲許的融資業務に関して、我々が資金面でのコミットメントを完全に履行することを意味する。我々はまた、MIGA(多数国間投資保証機関)が、世界銀行グループの他の機関と協力しつつ、開発途上国における民間投資への支援を継続するためには十分な財源を必要としているとの認識で一致している。IMFがシステム上の責任を果たすために引き続き十分な財源を有することが重要であるとの認識に立ち、我々は、IMF理事会に対して、9月の香港での世界銀行・IMF総会までに、第11次増資に関する作業を完了するよう努めることを要請する。最貧国の成長及び開発を促進する上でIMFが果たす十分な役割を維持するために、ESAF(拡大構造調整ファシリティー)が十分な財源をもって継続されることが必要である。

開発のためのグローバル・パートナーシップ
20.
我々は、リヨンで意見が一致した通り、持続可能かつ幅広く共有された経済の成長と開発へのコミットメントを改めて表明するとともに、開発途上国及び国際機関との全面的なパートナーシップを再確認する。我々は、このパートナーシップと二国間の努力を通じて、根深い貧困の撲滅、人間の潜在能力への投資及び尊厳の促進といった相互に関連する課題に対応することに引き続きコミットし、過去10年間に得られた明確な教訓と主な成果を踏まえることとしている。これらの課題に対応する上で、我々は、民間部門の補完的かつますます重要な役割を認識し、これを歓迎する。

21.
このパートナーシップは、責任の分担と利益の共有を基礎とする。我々としては、健全でグローバルな金融システム、開かれた貿易・投資体制及び先進経済における一貫しかつ持続可能な成長の実現にコミットしている。我々は、適切な開発援助が利用可能となるようにしなければならない。そしてこれらは、主として、最も大きな効果が得られる分野、世界経済の統合から取り残される危険のある最貧国、更には持続可能な開発の根本的な源である優先度の高い人的資源への投資に対して重点的に配分される必要がある。援助受入国の側においては、健全なマクロ経済政策を追求し、開発を真に促進し非生産的な支出、特に軍事支出を最小限にする財政上の選択を行い、我々の支援を最大限に活用し、更に個人の基本的権利を尊重しなければならない。我々は、積極的な支援を通じてこうした努力を強化する。我々は、我々の援助と信用供与を通じて開発途上国における非生産的支出を削減するIFIsの努力を支持するとのリヨンにおけるコミットメントを再確認する。

22.
特に貧困及び疎外にともなう問題が深刻なサハラ以南のアフリカにおいて、開発途上国が金融及び財政の安定、貿易及び投資の自由化、持続可能な開発及び成長の促進のために、包括的で外部に対して開かれかつ効果的な経済改革措置を実施していくに従い、我々とこれらの国々とのパートナーシップは、一段と深まり、新たなより市場指向の性質を帯びたものとなり得る。我々は、IFIs、特に世界銀行及びアフリカ開発銀行に対して、特に改革を進めるサハラ以南のアフリカ諸国が、優先課題を認識し、開放性、地域的統合、世界経済への一層深い関わり合いに向けた取組みを強化することへの支援努力を強化するよう要請する。このような行動は、生産的な外国投資と国内での資本形成への支援となろう。我々は、IFIsに対して、香港での世界銀行・IMF総会までにそれぞれの取組みについて報告するよう要請する。更に、我々は、開発途上国において参加を拡大するために零細企業育成のための戦略により大きな関心が集まっていることを歓迎し、二国間及び多数国間の援助を通じた零細金融における最良の実践例の重要性を強調する。

最貧国債務救済
23.
我々は、リヨンで打ち出された新たな債務イニシアティブの実施において見られた顕著な進展を歓迎する。このイニシアティブ(HIPCイニシアティブ)は、持続可能な財政状況及びより力強い成長を達成できるよう重債務貧困国が債務救済に必要な大胆な改革を実施することを助けるものである。IMFと世界銀行は、HIPCイニシアティブの下で、資格を有する国々を対象に、国際機関に対する債務の効果的な削減をもたらすために具体的な仕組みを確立し、この目的のために初期資金の利用を可能とした。パリ・クラブも、負担の公平な分担に基づき、このイニシアティブに全面的に参加する用意があることを表明した。

24.
我々は、このイニシアティブのために合意された枠組みが今後1年間更に実施されることを期待し、また、今後数ヵ月間に、追加的にいくつかの国々が救済の対象として資格を得るものと期待する。IMF、世界銀行及びパリ・クラブは、暫定期間における救済の提供を含めその役割を果たさなければならない。IMFと世界銀行はまた、他の国際機関の参加を確実なものとするために、アフリカ開発銀行の特別なニーズを考慮しつつ、これら機関との緊密な調整を継続する必要がある。新たなイニシアティブの成功は、債務国の強力な改革プログラムと効果的な債務救済の組合せにかかっている。我々は、既に数ヵ国が二国間の譲許的債務を大幅に削減したことを歓迎する。他の国々は、改革を進める最貧国のためにこの種の債務を削減し、あるいは可能であれば、免除する努力を強化すべきである。

腐敗と金融犯罪の撲滅
25.
我々は、IMF及び国際開発金融機関に対して、法の支配の確保、公共部門の効率性及び責任体制の改善並びに制度面での機能及び効率性を向上させるための対策を含め、各国が腐敗と闘うのを助けるためにその活動を強化するよう要請する。これらは、すべて腐敗行為の経済的・金銭的誘因や機会を除去することに資する。我々は、良い統治を促進するためのそれぞれの権限及び責任の範囲内におけるIFIsの努力を支持し、奨励する。

26.
世界銀行は、幅広い統治の問題を重視することに加えて、腐敗に対する具体的な措置を講じた。これは、世界銀行が資金供与を行なう契約に対して同行が適用する調達基準の透明性の向上と厳格化を通じて公共部門の調達基準を世界的規模で引き上げることによるものである。我々は、地域開発銀行に対して、この努力に全面的に協力するよう求める。これには、最高の水準の調達基準を設定することも含まれる。

27.
我々は、OECD加盟国の閣僚が、5月に、外国公務員への贈賄を効果的かつ協調的方法により刑罰化するとのコミットメントを行ったことを歓迎する。我々は、そのような賄賂の税控除に関する従前の勧告の迅速な実施を求める。我々は、1998年4月1日までに各国が刑事罰化の提案を立法府に提出し、1998年末までにその発効を目指すことにコミットしている。更に、我々は、以上の目的のために、1998年内の可能な限り早い発効を目指し、条約の交渉を、本年末までに完了すべく、速やかに開始することにもコミットしている。

28.
我々は、深刻な金融犯罪及び規制の悪用に関する事例についての法執行機関と金融規制当局との間の国際協力の改善に向けた我々のコミットメントを再確認する。我々は、我々の専門家に対して、来年のサミットにおいて報告し、勧告を行うよう求める。

29.
資金洗浄は、我々のすべての国の民主的な価値観及び金融に対する信頼性を継続的に脅かしている。FATF(金融活動作業部会)は、資金洗浄に対する国際的な闘いにおいて主導的な役割を果たしており、我々は、FATFがその重要な活動を継続すべきと確信する。重要な課題は、全世界のあらゆる地域に反資金洗浄のメッセージを広めることである。FATFは、その構成員を拡大し、各々の地域において重要な役割を果たし得るFATFの40の勧告にコミットする非加盟国を選択的に受け入れることを検討すべきである。FATFは、地域的組織とのより緊密な協力、国際金融機関による支援及び国際的な金融サービス業界の協力を求めることが必要である。来年にかけて我々は、来年のサミットで会合し、FATFの任務を更に5ヵ年更新することを検討するに当たって、FATFに対し、その非常に重要な活動を推進するための方策を再検討するよう求め、その結論を受け取ることを期待する。

成長するグローバルな貿易及び投資への支持
30.
貿易と投資は、一層の繁栄、持続可能な経済成長及び雇用の創出にとって不可欠である。我々は、貿易自由化を更に進めるという目標を支持し、グローバル化の恩恵を広めるために、ウルグアイ・ラウンドの成果である協定の完全かつ効果的な実施に高い優先順位を与える。グローバル化は、すべての人がグローバル化の結果としてもたらされる経済的利益の恩恵を享受しなければ持続し得ない。我々は、12月にシンガポールで開催された第1回のWTO(世界貿易機関)の閣僚会議を歓迎する。また、1兆ドルに相当する情報技術製品の貿易及び電気通信サービスの貿易について、今年初めに達成された重要な諸合意を歓迎するとともに、それが拡大されることを期待する。我々は、今年末までに、最恵国待遇の原則に完全に則り、より広範な国々による実質的に改善された市場アクセスと内国民待遇の約束を含む金融サービスに関する合意が達成されることが、WTOの全加盟国の利益につながると信じる。我々は、このような結果を得るために建設的に交渉を進めるとともに、我々のパートナーに対し、我々とともに努力するよう要請する。同様に、OECDにおける多数国間投資協定に関する交渉が1998年に成功裡に終結することを期待する。

31.
我々は、WTOに基づいた開かれた多角的貿易体制が最も重要であることを再度表明する。来年のGATT(関税及び貿易に関する一般協定)の50周年は、我々がこれまで達成したことを振り返る機会となるとともに、将来を見据える好機である。我々は、ウルグアイ・ラウンドの成果である協定に組み込まれ、シンガポールにおいて貿易担当大臣によって具体的に示された貿易自由化の推進のための作業計画及び時間的枠組を支持する。我々は、このプロセスのために、可能な限り幅広い支持を築き上げることにコミットしている。我々は、世界経済における進展、多角的体制の参加者の拡大及び残存する重要な伝統的貿易障壁を考慮に入れつつ、市場開放のためのイニシアティブを更に探求することで一致した。保護主義的な目的で労働基準を利用することを拒絶しつつ、我々は、国際的に承認された中心的な労働基準を遵守する決意を新たにする。

32.
我々は、WTOの規則を遵守すること及び商業的に意味のある市場アクセスを提供することへのコミットメントを基礎として、WTO加盟国を拡大することに高い優先順位を与える。シンガポールで一致した通り、我々はまた、行動計画を通じて後発開発途上国の貿易システムへの統合を更に進展させることを支持する。この計画には、例えば、これら諸国の輸出の拡大及び多様化を促進するために、これら諸国の製品に対し予測可能でかつ有利な無税のアクセスを自主的に与えることが含まれる。我々は、WTO・UNCTAD(国連貿易開発会議)・ITC(国際貿易センター)会議により、これら諸国が貿易と投資の拡大による恩恵を享受する能力を向上させることを期待する。我々は各々、引き続き、様々な手段によって、我々の市場への後発開発途上国のアクセスを改善する。

33.
電子商取引の発展は、我々の市民と企業すべてに対して大きな恩恵を生み出す可能性を持つ。そのためには、電子商取引が予測可能かつ安定した環境で成長できるようにしなければならない。我々は、我々の当局者に対しOECD、WTO、その他適切な国際機関や民間部門と協力してグローバルな電子商取引を促進する機会を明らかにすると同時に、国家安全保障上の利益の保護、消費者保護、効果的な租税行政及び資金洗浄を含む犯罪行為への対応能力を確保する上で、電子商取引がもたらす課題を明らかにするよう指示した。

34.
リヨンにおいて、我々は、税関手続の標準化と簡素化への取組みを開始した。我々は、税関業務の専門家に対し、その作業を次の1年間で完了し、我々の次回会合の前に報告を行うよう求める。その報告は、税関及び関連する行政機関がその任務を遂行するに当たり必要なデータの標準化及びそれを電子的に報告する形式の標準化の双方に関する取組みと、税関業務の効果的遂行を阻害しない範囲での提出要求データの最小限化に関する取組みを内容とする。

35.
各国経済のグローバル化によって、租税に関する有害な競争という課題が深刻化した。リヨンでのコミュニケにおいて述べられているとおり、金融その他の地理的に移動可能な活動の誘致を目的とする税制に見られるような税に関する国家間の有害な競争は、貿易と投資を歪曲する危険があり、各国の課税基盤の浸食につながり得る。租税に関する有害な競争は税制の公平性と中立性を損なうものである。したがって、我々は、OECDが着手した作業を極めて重視している。我々は、来年のサミットでの検討に間に合うように、OECDがこの問題に関する作業の結論と勧告を作成することを希望する。

ウクライナ
36.
我々は、ウクライナが経済改革を再活性化するとともに投資家にとってより好ましい環境を整備するとの課題に取り組むよう奨励する。このような取組みにとって、また国際金融機関及びドナーにより既に提示されている相当な規模の資金供与パッケージへのアクセスを得る上で、ウクライナ政府が昨秋概要を示した野心的な改革計画について直ちに進展が見られることが極めて重要である。ウクライナ政府は、投資家の法的地位及び実際上の取扱いを改善するために、いまこそ決定的な措置をとる必要がある。これは、民間部門を発達させる上での鍵であり、また、それがなければ改革は失敗する。

37.
我々は、チェルノブイリ閉鎖に関するウクライナとの1995年了解覚書の実施において大きな前進を遂げた。我々は、チェルノブイリ閉鎖後2000年以降の、ウクライナの電力需要を満たすためのエネルギー・プロジェクトの資金動員について、了解覚書の範囲内でウクライナを支援することへのコミットメントを再確認する。これまで、総額10億ドルを超えるプロジェクトが合意されている。我々は、ウクライナに対し、持続可能な成長に必要な改革、特にそのエネルギー部門における改革を引き続き行うよう要請する。

38.
我々は、破壊されたチェルノブイリ原子炉の残骸を覆う石棺について、その環境上の安全性を確保することの重要性につき意見の一致を見た。この課題は、明らかにウクライナ単独の能力を越えるものである。この問題は、国際社会にとっての大きな課題である。我々は、ウクライナとの間の了解覚書で約束したコミットメントに追加を行うことを決定した。我々は、多数国間資金供与メカニズムの創設を支持し、G7がこのプロジェクトの存続期間にわたって3億ドルの貢献を行うことで一致した。我々は、このプロジェクトの完全な実施を確保するため、この問題に関係する政府及びその他のドナーが、今秋開催される特別プレッジング会合に我々とともに参加するよう要請する。

出典: 日本政府


G8 Centre
Top
This Information System is provided by the University of Toronto Library and the G8 Research Group at the University of Toronto.
Please send comments to: g8info@library.utoronto.ca
This page was last updated .

All contents copyright © 1995-2003. University of Toronto unless otherwise stated. All rights reserved.