University of Toronto G8 Information Centre

首脳会議・閣僚会議

東京 サミット

東京経済宣言(仮訳)

1986年5月6日

  1.  我々主要先進7ヵ国の元首及び首相並びに欧州共同体の代表は、第12回経済サミットのために東京で会合し、1年前のボンにおける会合以来の世界経済の進展を回顧した。その結果、我々の国民の繁栄と幸福を維持かつ向上させ、関発途上国がその経済成長と繁栄を推進していくための努力を支援し、そして、国際通貨及び貿易制度の機能を向上させていくために、我々は共同して事にあたっていくとの変わらぬ決意をあらためて確認した。
  2.  昨年の会合以来の進展は、最近の一連の経済サミットで我々がコミットしてきた政策の有効性を反映するものである。先進諸国の経済の拡大は4年目に入った。我々のいずれの国においても、インフレ率は下降しており、節度ある財政・金融政策の継続と相俟って金利の大幅な低下をもたらした。また、経済の基礎的諸条件をより良く反映するような為替レートの顕著な変化があった。更に、最近の石油価格の下落は、特定の産油国に困難を生じさせるものの、先進諸国ひいては世界経済のインフレなき持続的成長及び世界貿易の量的拡大に資するものである。総じて、これらの進展は、世界経済の将来に対してより明るい展望を与え、かつ、信頼を増進するものである。
  3.  しかしながら、世界経済は、成長の持続性を阻害しかねないいくつかの困難な挑戦に依然として直面している。これらの中には、高い失業率、大幅な国内及び対外不均衡、為替レートの将来の動きに関する不確実性、根強い保護主義圧力、多くの開発途上国が引き続き直面している諸困難、いくつかの国における深刻な債務問題、及びエネルギー価格の水準をめぐる中期的見通しについての不確実性がある。もし、大幅な不均衡及び歪みがあまりにも長く放置されるならば、世界の経済成長及び開放された多角的貿易体制に対し、ますます大きな脅威を及ぼすであろう。我々には、これまでの努力をゆるめる余裕はない。我々は、政策を策定する上で、中長期に目を向けるとともに、現下の諸問題が相互に連関しあい、また、構造的性格を有することを考慮する必要がある。
  4.  我々は、成長、雇用及び国内経済の世界経済への組み入れを促進するため、全ての国において経済活動の全ての分野にわたり効果的構造調整政策が実施される必要性を強調する。このような政策は、技術革新、産業構造の調整並びに貿易及び対外直接投資の拡大を含む。
  5.  我々の各国において、適切な中期的な財政・金融政策の枠内で、公共支出の確固たる抑制を維持することが依然として必要不可決である。我々の中のいくつかの国においては、引き続き過大な財政赤字が存在し、それらの国の政府は、漸次これを削減する決意である。
  6.  前回会合以来、我々は、労働力の増加に対応する新たな雇用の創出にある程度成功してきたが、我々の中の多くの国においては、失業率は依然として高すぎる。インフレなき成長は、今後とも、失業の歯止め及び削減に対する唯一最大の貢献を行うものであるが、それは雇用創出、特に新たなハイテク産業及び小企業における雇用創出を促進する政策により補強される必要がある。
  7.  同時に、サミット7ヵ国の間で緊密かつ継続的な経済政策の協調をはかることが重要である。我々は、5ヵ国の蔵相及び中央銀行総裁の間の協調の進展という最近の動きを歓迎する。かかる協調は、整然とかつインフレを生じることなく為替レートの再調整と金利の低下をもたらすうえで有益であった。しかしながら、我々は、国際経済政策の効果的な協調のための手続きの一層の強化を確実にするためには、追加的な措置を講ずべきことに合意する。このため、首脳は、

     欧州共同体の代表とともに、

     首相は、

     協調をはかる上でこのような改善は、10ヵ国蔵相会議における同様の諸努力とともに行われるべきである。

  8.  先進国によるこれらの政策の遂行は、それが世界経済を強化し、より低い金利のための条件を創出し、開発途上国に対する資金の流れを増加させる可能性を生み出し、技術移転を促進し、さらに先進国の市場へのアクセスを改善する限り、開発途上国にとって有益であろう。同時に、開発途上国、特に債務国は、国内貯蓄を活用し、逃避資本の還流を奨励し、海外からの投資のための環境を改善し、さらにより開放的な貿易政策を促進するための措置と併せて、効果的な構造調整政策をみることにより、世界経済においてより充実した役割を果たしうる。この関連で、我々は、一次産品輸出への依存度の高い開発途上国が直面している困難な状況に特に留意しつつ、引き続きこれら諸国の産品の加工度向上及び経済の多様化のための努力を支援するとともに、我々自身の貿易及び国内政策を策定するにあたり、これら諸国の輸出の必要性を考慮することに合意する。
  9.  民間資金の流れは、開発途上国の開発ニーズに対応するにあたり引き続き大きな役割を果たす。我々は、開発途上国への二国間及び多数国間の公的資金の流れを維持し、適当な場合には、これを拡大していく意向であることにつき再確認する。この関連で、我々は、早急に相当な規模の国際開発協会(IDA)の第8次増資が実現すること及び適当な場合には世界銀行の一般増資を行うことを重視している。我々は、多数国間投資保証機関(MIGA)の業務開始に向けての進展に期待する。
  10.  我々は、国際的債務問題については、ケース・バイ・ケースによる対応が引き続き重要であることを再確認する。我々は、債務問題に対する協調的戦略の策定が、特に、米国による債務に関するイニシアティブを発展させる形で進展していることを歓迎する。国際開発金融機関を含む国際金融機関が引き続き中心的な役割を果たすものであり、我々としてもこれら諸機関、とりわけIMFと世界銀行の間の一層緊密な協力へ向けての進展を歓迎する。健全な調整計画はまた、民間銀行の融資の再開、債務繰り延ベにあたっての柔軟性及び輸出信用への適切なアクセスを必要とする。
  11.  我々は、アフリカにおける食糧事情が改善してきたことを歓迎する。しかしながら、多くのアフリカ諸国は緊急な援助を必要としており、我々はこれを支援する用意がある。より一般的には、我々は、アフリカの援助需要の充足を優先すべきことを引き続き認識している。外相によって採択され、我々に提出された対アフリカ援助報告書に示された諸措置は、着実に実施されるべきである。これらの国々に対する援助は、特に中長期的経済発展に重点を置いて行なわれなければならない。この関連で、我々は、サハラ以南アフリカ諸国のための特別基金を通じた協力を継続すること、新たに設立されたIMFの構造調整ファシリティーを早急に実施すること及びIDAを活用することを特に重視している。我々は、この地域の長期的な発展の基盤作りのため、来る国連アフリカ特別総会に積極的に参加する所存である。
  12.  開放された多角的貿易体制は世界経済の効率と拡大のための1つの鍵である。我々は、保護主義を防遏し巻き返し、貿易制限を軽減・撤廃するとのコミットメントを再確認する。我々は、ガットの制度と機能を強化すること、世界貿易における新たな進展及び国際的な経済環境に対してガットを適応させること並びに新たな問題を国際的規律の下に置くことを支持する。新ラウンドでは、就中、サービス貿易並びに知的所有権及び対外直接投資の貿易関連面に関する諸問題につき検討が行われなければならない。貿易の一層の自由化は、我々自身にとってと同様に開発途上国にとっても重要であると我々は考えており、また、我々は、新たな多角的貿易交渉の早期開始のためのガットにおける準備過程に全面的にコミットしている。我々は、9月の閣僚会議においてこの方向で決定的な前進が図られるよう努力する。
  13.  我々は、いくつかの重要な農産物について、技術の向上、世界市場情勢の変化、我々の全ての国における長年にわたる国内補助金及び農業保護政策等から発生した世界的な構造的余剰状態が存在していることを憂慮をもって留意する。これは、一部の開発途上国経済を阻害するとともに、より広範な保護主義的圧力の危険を増大させる惧れがある。これは、我々すべてが共有する問題であり、相互の協力によってのみ対処しうるものである。我々は皆、農村社会の福利にとっての農業の重要性を認識しているが、我々は、余剰が存在する際には、世界需要に照らして、政策を再編成し、農業生産構造を調整するための行動が必要であることにつき合意している。我々は、これらの問題を理解することの重要性を認識し、この分野におけるOECDの作業を全面的に支持するとの決意を表明する。
  14.  最近の石油価格の下落は、我々が過去10年間に協力して遂行してきたエネルギー政策に負うところが大であることに留意しつつ、我々は、長期にわたるエネルギーの市場の安定と供給保証を達成するための政策の継続性が必要であることを認識する。我々は、現在の石油市場の状況は、備蓄の積増しを希望する国がそれに実施することを可能とすることに留意する。
  15.  我々は、世界経済のダイナミックな成長のための、科学技術の重要性を再確認し、技術、成長及び雇用に関する作業部会の最終報告に感謝の意をもって留意する。我々は、米国の有人宇宙基地計画の進展及び欧州宇宙機関(ESA)による自主的な作業の進展を歓迎する。我々は、本計画への参加国間の真の協力関係と適切な情報、経験及び技術の交流の重要性を強調する。我々は、また、ドイツ連邦共和国が主催した「生命科学と人間の会議」の成果に満足の意をもって留意するとともに、次回会合を主催するとのカナダ政府の決定に感謝する。
  16.  我々は、自然環境の保全に対し他の諸国の政府とともに、責任を有することを再確認し、汚染の防止及び抑制並びに天然資源の管理に関する国際協力を引き続き重視する。この関連で、我々は、環境測定技術及び慣行の改善及び調和のための環境専門家グループによる作業に留意し、できるだけ早期に報告するよう要請する。我々は、また、環境分野において開発途上国との協力を強化する必要性を認識する。
  17.  我々は、1987年に再び会合することに合意し、イタリアにおけるこの会合の開催についてのイタリア首相の招待を受諾した。
 

出典: 日本政府


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